どしゃぶり長距離ランナー/麦穂の海
 
ために

時おり
開けた空間に出る必要があった


東京駅を深海ダイバーのように
根気良くもぐって
京葉線

今度は古い潜水艦で一気に浮上するごとく
海辺を目指す


程なく運河の張り巡らされた
倉庫の町並みが見え、


いよいよ女は
窓硝子の奥に目を凝らす


その先に、女が解き放たれる光景があった


砕ける波のエクスタシーはない
脳天がクラクラするような
白く泡立ち満ちてくる青い海水もない

それでも
そこは海はだった

海と空をまっぷたつに分ける
残酷で美しい
水平線見える場所だった

ひとりで八方破れの
羽をを右へ
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