どしゃぶり長距離ランナー/麦穂の海
シャツの裾は掴めたのに
肝心の手が破片だらけになっちゃって
そのまま女神に置いていかれた
大きな雨粒が
矢のごとく降り注ぐ
赤さびと銀色の夜に
せっかく閉めたはずの
雨戸と窓を
もう一度
開け放ってしまった
新鮮な雨音と
放射性物質を含む風が
湯上りの耳元を過ぎていく
雨は豊かに降っていた
街頭に照らされたアスファルトの上は
溢れるように波紋が踊る
爽快なまでの降りっぷりに
あきれ、ちょっと笑ってしまって
こんななかを
あの女は走っていたのかと
ふいに泣けてくる
※
ぐしゃぐしゃに
畳まれた羽を広げるため
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