灰色の大地の下で/wako
を抜けて
南へ歩く
廃墟となったモノクロームの街は
何も語りかけてはこない
すべての生命が途絶えて
あの日で
?
廃墟の街をあてもなく歩く
相生橋を渡って
欅通りを北へ歩く
協会を通り過ぎた頃
かすかに聞こえるピアノの調べ
懐かしさのあまり
音に引き寄せられていく
あれは確か
メンデルスゾーンの春の歌
無意識に指が動く
音の源をたどって
螺旋階段を上がる
立ち止まって耳を澄ませ
またゆっくりと上がる
三階の手前のドアに違いない
そっと開く
楽譜から目も離さずに
懸命に弾き続ける後姿
じっと聴き入る
窓の外には
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