灰色の大地の下で/wako
欅の枝がおおいかぶさり
まるで森の中
体を揺らせて
頭で拍子をとって
弾き続ける
テーブルの上にはマヤコフスキー詩集
花瓶のラナンキュラスが震え
ピアノの調べがまとわりつく
木漏れ日が壁を走り
夕刻を告げている
この部屋は生きている
耳もとで呼ばれた気がした
凍りついて動けない
衝動的に花瓶をつかんで
力いっぱい振り下ろした
ラナンキュラスが床に散らばり
ピアノの音が途切れる
振り返らずに走った
人ひとり殺すなど
ここでは簡単な事
土をかぶせて完全犯罪
欅の木は完全に埋めてしまった
この下で何があったか
もう誰にも解からない
返り血をぬぐって日々を生きる
なぜだかもう春の歌は弾けない
ラナンキュラスを正視できない
時々後頭部がズキリと痛むが
気のせいかも知れない
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