はちがつ/ホロウ・シカエルボク
 
ところで夏の悪あがきを堪能したいのだけれどこんなに暑い中なのにきみの顔はまだ色を失ったままで触れようとすれば透き通るんじゃないかというくらいに青白くてぼくは少し目を閉じる、その一連の動作に一片の個人的感情すら混入させないように注意しながら、そうして蝉の声を聞いている、そうだ、今日は道に転がっている蝉の死骸を拾い上げようとしたら激しく鳴いて飛んで行ったみたいな、そんな夏だ。

その蝉の声が一段落したところでもう大丈夫だときみは言う、「汗臭くなっちゃう前に避難しようよ」と言う、そんなのぼくのほうはとっくに手遅れな状態なのだ、ここで流した汗のほとんどが冷汗のきみと違って。

どんな気分だ、日
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