イギリス/梶谷あや子
してるんだ、だから
―どうして
ありがとう
(ありがとう、きみのことが大好きです)
(だから行くよ)
(きみがおれになってしまう前に)
(春が来たらまたあの曲を思い出すよ)
(俺たち三人の、かけがえのない)
(宝物だ)
?
手紙を 綴っているのだ
あの人へ宛てた手紙を
夕暮れの
おびただしいまでの 太陽を背に
首筋を焼く、この熱さが 彼からの
最初で最後の贈りものであったならよかった
それが返答なら
ひとりでに歩みだす あしに触れる
碑(いしぶみ)のような感じやすさ
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