イギリス/梶谷あや子
 






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哀しいことは何もなかった
ただお前が行こうと云ったので
翌朝はそのとおりになった
ただそれだけ・だった


二重螺旋を描きながら進む
双子の銀河が交わることのないように
あの森で倒れた俺たちも
ついにお前をみつけることはなかった


俺ははじめに
たった一度逃げてしまったがために
あとはもう最後まで
逃げ続けなくちゃいけない
いけなくなったのだ
皆もそれは
おそらくはそうで


幾度となく捕まって
そのたびに無数の手を振り解いて
辿り着いたこの水の先で
薄青く透きとおった頬を
すくいあげる指の一片に

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