[小さな風]/東雲 李葉
からか私を疎んでいた。
鈴虫さんに道聞いて
鈴虫はなぜ間違った道を教えたの?
それとも風が道を誤ったの?
迷子になってしまったの
だって誰も道しるべがいないから。
たったひとりで迷子になってしまったよ。
人生の選択肢なんて実はそんなに多くない
仕事は?結婚は?子供は?
それを聞いて私の何を計ろうというの。
しません。しません。いりません。
だってこの先どうなるかなんて分からないじゃない。
夜。街明かりにほのか照らされた薄闇。
部屋の明かりをすべて消し、母は私を抱いてベランダへ出た。
あの頃住んでたマンションは6
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