ここにいないひとに送るピアノについての戯言/佐々宝砂
どうしたらいいのか誰も教えてくれない
それが俺だと主張しても
僕に最も近いひとびとさえ信じてくれない
そりゃあたしだって
こんなものが詩だとは主張しないよ
だけどな
これはほんものだ
この詩はほんものだ
嘘ではない
嘘ではないもの
本質的なもの
自身に属するもの
それが詩なのだと言い張り
自らの小さな世界を紡ぎ続ける幸福な詩人たちに
俺はひそかな訣別の言葉を投げよう
僕は私はあたしは俺は
あいつとは違う
あいつはなるほど詩人なのかもしれないね
それは認める
私はあいつの詩に好意的な評さえ書くよ
そんなことはラクだしねえ
でも
あいつが詩人
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