ここにいないひとに送るピアノについての戯言/佐々宝砂
詩人ならば
あたしゃ詩人でなくてかまわない
というよりも
実際問題として違う人種なんだからさ
無理して同じ名前を名のることもないっしょ
だから俺はわざわざ三流だの二流だの
怪奇詩人だの名乗ってるってのに
ああ馬鹿馬鹿しい
ま とにかく
イヤなことは考えるのやめよう
で俺はまたも息をとめる
一瞬人間でなくなる
身体が文字通り息詰まるとき
ここにいないきみがあなたが闇にあらわれ
ここにないこのピアノが
幽玄な和音を奏で始め
あたりにはほら
水のペリ 炎のジン お喋りする虫たち
それからほら 蹄のあるチーズくさいやつもやってくるし
そうだよ
そうこなくっちゃ
だから詩を書くんだ
詩じゃないとしてもまあどうでもいいんだ
とにかく書きたいもんを書くんだ
これでいいんだと
今夜は思っておくことにする
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