幽霊に花束を/北大路京介
なぁって思ってたんだけど
なんにも出てこないし見えない見えない
なにも見えないのが普通なんだ。何も見えなくて普通なんだ。
と自分に言い聞かせるようにして その日は、うちに帰った。
一日経ち、二日経ち、三日目の夜
びっしょり寝汗をかいて目を覚ました。
目は覚ましたけれども身体は動かない。
ああ、これは金縛りというやつかと再び寝入ろうと瞼を閉じた。
かいた寝汗が気持ち悪い。
虫の鳴き声が聞こえる。
虫の鳴き声に混じって、かすかに念仏を唱えてるような低い声も聞こえてきた。
なかなか寝入れない。
寝返りを打とうにも身体は動かない。
耳元に誰かの息
[次のページ]
戻る 編 削 Point(18)