スチール/黒川排除 (oldsoup)
て聞いた、やはりまったく知らない人間のものだった。夜を、とわたしが聞き返した、夜を、と彼は断言した、その後にわたしはもう一度夜を、と呟いたが彼は答えなかった。氷は全然溶けていなかった。気温を物語っているのだ。わたしはその氷を早く隠してしまいたかった。わたしにとってはその氷は何よりも恥だった。だが実際には微動だに出来なかった、紳士が微動だにしていないからだった──まるでわたしのように。わたしのように? わたしははっとした、はっとして出かかった言葉を有耶無耶のうちに理解することしか出来なかった、わたしはわたしの語ろうとしたことを金輪際語るわけにはいかない。わたしの腹は勢いよく下った。
同じように、
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