八月の光/カワグチタケシ
やがて来る引き波の底
陽気な友達は俺の両足をつかみ
俺は自分で築いた砂の城の城壁につかまるが
靴は一体どこへ行ってしまったのだろうと
考える間もなく城壁は崩れる
八月の光の中
誰も気付いていない
最後の八月の光の中
青い水は流れる
青い水は満ちる
水の底で足の裏に痛みを感じる
死んだ貝を踏んでいる
髪を束ねた娘は多分俺を愛していない
眠ろうにも網戸にはりついた蝉が怖くて仕方ない
今年の波は砕けた貝で出来て居て
裸じやあとても泳げません
だからと云つて
溺れる訳にもゆきません
せめて夕日の暮れる前に
鐘をつかな
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