罹災者/渡 ひろこ
 
を探っても
底が浅くて見つからない
リビングの画面からは伝わらない現実が、其処にある
 
(あの日から世界が変わった
 
 垂れ流す時間のスポイトは日常を希釈し続ける

 上手く開かない唇はマニュアル通りの残骸を落とす)


「あ、罹災者証明書は…。」                            

「いえ、よろしいですよ。口頭の申請でも無料で入館戴けますから。
どうぞごゆっくりご覧ください。」                                                             
                  
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