罹災者/渡 ひろこ
 
                               
受付カウンターを境界線に
対岸の乾いた高台から声をかけても              
赤土がほろほろ崩れるだけで                           
溜まった澱を少しも零せなかった諦めの視線が                   
斜めに私の身体を斬って、展示室に消えていく                    
                                         
差し伸べたかった手が宙に浮いて                         

気づいたらカウンターの上に散乱した

プラスチックの言の葉を 只々、拾い集めていた







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