火/長押 新
 

私は流木だった
唇の皹の上に小鳥がとまり
眠っている瞳を開けようと歌う
そして愛着のある皮膚を
剥ぎ取っていってしまう
もうわたしではない唇
しがみつく砂の粒を
数えているところだったのだ
それがひどく痛かったのだ
川の上を回転する流れ木
沸き上がることのない水に
浸っているかなしみ
かなしみをみているのは小鳥だ
わたしには知れないこと
光はみえている
夜になればわたしを離れ
ここにいないのだから
わたしがここにいることを知らない
夜になれば
わたしには知れないこと

森が燃えている
鳥が鳴いている
獣は逃げようとしているだろうか
凛々しい筋肉が
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