停電の夜に/あおば
舗では、今でも炭火を用いているのではないかとの疑念が沸々とわき出すのを覚え
これ以上書き続ける気持ちを失い
廊下を音もなく通り過ぎる古老に声を掛け
計画停電の夜の思い出を語るように促すが
古老は、歳を取りすぎていてつい最近の計画停電の夜のことは忘れてしまい
1946年頃に始まる不規則な停電の夜のことを語り出す
なんでも、1945年8月に戦時体制が解かれ、軍需工場は操業を停止
当然のことながら、動力源のモーターも止まり、水力電力に余剰が生じた
都市では家庭用薪炭、石炭などの燃料は常に不足気味で、電力料金は定額であっ
たのをこれ幸いと、簡便な電気コンロ等の需要が増大、冬を迎え、電気ス
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