木々の家々/長押 新
木々で、遊んでみたり、隠れてみたり、はじめるのです。わたしたちは、その小鳥を追うように、歩きはじめました。考えもなしに、向いている方向に、足を動かしながら、並んでみたり、わたしが後ろになったりと、角を何度か曲がり、同じ道を通っていました。向いている方向が、前なのですから、至極まっとうに歩いていたわけです。いつの間にか、他愛のない、話がはじまりました。時にそれは退屈な夕食の話であったり、森の小さな井戸の噺でもありました。わたしが、一際、耳を傾けていたのは、やはり、もっとも広い、草原の匂いのする、お話です。ついつい、互いに、よもや世界中の話をするに至る時です。彼は、足を、ゆっくりと、緩めました。指をと
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)