木々の家々/長押 新
をとんとん、とわたしは、何か言いたげに、右の角を見つめていた時です。そして、口を、開いたのでした。
そんなことよりも、今は、三月ですから、時間で言うと、まだ、夜明けです。
言われてみれば、確かに、そうなのです。歩いている間に、誰にも、会わなかったのも、そういうことでしょう。わたしたちは、まだ、おやすみ、おやすみ、と言って別れました。それから、それぞれ、家の門をくぐり、おはよう、おはよう、と、ドアを開けて、誰ひとり、起こさないように、ドアを閉めるのでした。小鳥が、やっと、巣の中に、戻っていました。
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