サラとスズメバチ/たもつ
 

そんな淡い期待があった
夜になるとサラは長袖のシャツを二枚重ねて着た
ジーンズをはき、手にはゴム手袋をはめた
ただの気休めに過ぎなかった
娘たちには、決して家を出てはいけない、と言い聞かせた
亭主はアルコールに疲れ果てて眠っていた
その眠りが熟睡とは程遠いことは
サラにも何となくわかっていた
巣の真下から手を精一杯伸ばし
入口に向かって殺虫剤を噴射した
霧状の薬で辺りが真っ白になる
視界が晴れるまでしばらく待った
巣に変わった様子はなかった
やはりハチはいなかったのかもしれない
サラは玄関で身に着けていたものを脱ぎ、
薬を洗い流すためにバスルームへと向かった
翌朝
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