ただ、流れてゆくものは行先を見ない/ホロウ・シカエルボク
 





浅い流れの面が跳ね返す光のように
幾つもの瞬間を網膜に焼きつけて
君は僕の縄張りから消えた、終わりを隠す猫みたいに
夕暮れが最も鮮やかな季節は
いつまでも繰り返すバラードのようだ
歩けなくなった地点までを
緩慢なカット・イン―アウトで果てしなく見続けるのだ
デジタルは二度ばかりの「決定」を押すだけで
ひとつの名前を無かったことにしてしまう
そう、水切りの石が川底に沈むみたいに
僕は君を通過することで再生される感覚だった
君が僕をいきものにしてくれていた
からっぽの世界に突然投げ出された僕は
留まる足場を持てないままどこまでも流
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