ただ、流れてゆくものは行先を見ない/ホロウ・シカエルボク
 
も流れてゆく
いつか
互いの体温であることを誓い合ったよね
それが何かなんてけして言葉には変えられないけれど
あの日共有したそれぞれの輪郭は
いまでは忘れられない夢のような
もう触れることの出来ないリアルを輝かせているのさ
対岸の堤防の向うの錆色の工場で
なにかが処理されて煙が立ち上っている
コントラストの強い夏の光と
躊躇いがちな雨雲の集まりの間で
暫定的な飛行機雲のようにそいつは流れてゆく
沈没船の様な川底の自転車のハンドルの端から
弾薬の様な色をした魚が試運転みたいに跳ねる
高層マンションから降りてくる偽物の風
崩れた廃墟の壁の匂いがする
崩れた廃墟の壁の気持ちが
流れてゆく僕にはとてもよく理解出来る
失う、ということは
いま、現在しか
ここになくなるという状態なのだ
あっ
白鷺が見ている
白鷺が
じっと






僕のことを





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