ひとつ うつろい ?/木立 悟
 





ひとさし指が青く
午後に挿される
最初に想い出し
最初に忘れるもの


夜に響く手と
真夜中に響く手との差異
進み去る方へ縮む手の群れ
闇の近くに輪を描く


はらんでいた
器のなかの丘
津波から
くちびるを離した


常に周回遅れの花束をかかげ
誰も来ない地に立っている
雨も雪も
風も音も


紙を掻く爪
跡もなく
分けることのできない夜に
静かに羽を出しては入れる


弦に憑いては離れゆく
紙の裏の父の声
夜の容れもの
穴をあけてはのぞく虹


幕を引くものの左目が
下から上に濡れている
内側にはま
[次のページ]
戻る   Point(2)