さくらぞめ/亜樹
かつ、かつ。
ざ、ざ、ざ。
薄暗い闇の中、スコップが土を引っかく音が響く。
暖冬が功を奏して、昼間に比べ遥かに低い夜の気温でも土は凍ってはいなかった。それでも長い年月何百人もの人間に踏み固められた神社の境内の土は、酷く固い。鉄で出来たスコップに手が痺れる程の力を混めて、やっと数センチ突き刺さる。
「灯り、必要なかったね」
「懐炉は欲しかったな。寒いよやっぱり」
大きく丸い満月が薄明るく辺りを照らしてはいたが、昼間と違い其の光に温もりは無い。
底冷えのする、青白い光だ。
薄い暗闇の中で、僕と沙名の影が細く、濃く伸びていた。
この神社の桜の
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