さくらぞめ/亜樹
 
も笑う。当たり前のように。
「何にも、埋まってないね」
「うん」
「琥太、馬鹿みたいだよ。何にも無いのにこんなに掘って」
「僕が馬鹿なら沙名も馬鹿さ。ぼんやり其れを見ていたのだから」
「あら、厭だ。私はちゃんと目的があって、琥太が掘っているのを見てたのよ?」
「目的?」
「そう。」
 沙名はポケットかた青いビー玉を取り出して、僕に見せ付けると其れをそっと穴の底に置いた。
「琥太がね、一生懸命、穴掘ってるの見てた。吐いてる息が、白いのを見てた。」
「沙名」
「桜の下に、何にも埋まってないのがわかったから、代わりに、これ、埋めてしまおう。私の大切な、大切な、何かと一緒に、埋めてし
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