さくらぞめ/亜樹
。琥太こそ休んだら?」
「ん〜……もう少し、掘ってみるよ」
沙名は止めない。
ふうん、とだけ云って、じっと見ていた。
僕はまだ穴を掘る。
ざ、ざ、ざ。
ざざ。
『死体が埋まってる』なんて馬鹿のこと、本当に信じてるわけではなかった。
其れはきっと沙名も一緒だ。
ただ、少し。
この生ぬるい現実を、いくらか冷ます『真実』が手の届く処に欲しかった。
それだけなのに。
いつの間にか、随分僕は意地になって、ただひたすら掘っていた。
沙名はただ見てる。
一言だって、「もうよそう」とは言わない。
沙名がそういえば止めるつもりで、僕はただ
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