しおまち/亜樹
だ。からからに乾いている。
「姐さん、旦那は?」
「三日前から海の上だね。今度帰んのはいつになるやら」
食い扶持が減って有り難いさと女は言った。余之介にはそれが本音か建前か余之介には判別がつかず、なんと言って良いものかもわからなかった。女はそんな余之介をまた笑う。
「お客さん、奥さんはいるのかい?」
「……ああ」
「ふぅん、美人かい?」
「さぁ?どうだろな」
「子供は?」
「……まだだよ」
そもそも余之介が紗枝を娶ったのはつい先月だ。いるはずが無い。もしかしたら帰った頃に紗枝の腹が膨らんでいる可能性も無いではなかったが、限りなく低いように思う。紗枝が自分の子供を産む、とい
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