しおまち/亜樹
 
りのせいで多少幼く見える。
 すすった麺は余之介が普段食べているものより幾分塩辛くはあったが、歩き通しで空になっていた胃を満足させるには十分だった。半ば飲み込むように咀嚼し口を開く。
「北井の方からだな」
 実際はその更に奥だ。けれど女はまぁえらい遠いところからと目を丸めた。
「行商かね?」
「ああ、薬の。どうだい、一つ」
 葛籠をぽんと叩くと、よしてくれよと女は笑った。
「そんなもん買う金があるんならもっと良いおべべを着てるさね。怪我したなら唾つけるし風邪引いたんなら大人しく寝る。それでどうしようもないなら諦めるだけさ」
 医者と薬の世話になったのは子供産んだときだけだよと、胸を
[次のページ]
戻る   Point(0)