しおまち/亜樹
伝え、ついでにすいた小腹を膨らまそうと品書きの端に書いてあった饂飩を頼む。外に置かれた長椅子に腰をかけ、汗を拭いた。足は疲れの峠を越えていて、もはや感覚も鈍っている。
程なく白い湯気を伴って、茶碗よりやや大きいくらいの丼がやってきた。竹を削っただけの粗末な箸と共に余之介はそれを受け取る。実家のものより多少出汁の色が薄い気がした。
「お客さん、どっから来たね?」
よっぽど暇なのか、それとも元来の話好きなのか、娘は茶店の中には戻らず勝手に余之介の隣に腰をかけた。近くで見ると、娘というほど若くは無い。せいぜい余之介より二三歳下という程度だろう。垢抜けているわけでもない、目鼻が目立つ顔のつくりの
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