しおまち/亜樹
くあることである。余所者がいつでも歓迎されるはずも無い。ひょっとしたら老人は釣りなどせず、ただ海を見ていただけなのかも知れない。
「この辺に、宿場は、あるかい?」
耳が遠いのかもしれないと先程よりも大きな声で尋ねると、同じく老人は無言で道の向こうを指差した。
果たして老人が指差したのは、村の敷地内なのかそのまた先なのか、余之介は若干の不安を抱いたものの、他に仕様が無く歩き出した。
有難いことに数十歩も行かない内に二階建ての茶店を見つけ、余之介は安堵の息を吐いた。店番をしていた娘に尋ねると、思ったとおり二階は旅人専門の宿になっているらしい。
そのまま今夜泊りたい旨を伝え
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