路地裏のはげしい雨にまぎれて/ホロウ・シカエルボク
 
溝の中で
忘れられたそいつらは悲鳴を上げていた


野良犬はうなだれて
ポリバケツのあたりをうろつき
蓋を外すための長い指を欲しがる
その中からはたしかに
まだ食べられるもののにおいがしているのに


灰に帰したポエトリー
忘れられてから、そう
すべてのものは色づいてゆく
あまいおんなの囁きや
たしかな雨の冷たさや…
おとこの記憶はあしもとの泥にまみれ
なにもはっきりとは思い出せない
割れた街灯が必死ではじき出す明かりはブルー
そのあたりだけ雨粒が
すぐに死ぬ虫みたいにかがやいて見える


短針と長針が雨に流れてゆく
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