路地裏のはげしい雨にまぎれて/ホロウ・シカエルボク
 

ランドセルやカラフルな小さい靴
アタッシュケースや契約の書類
エンゲージ・リングとウェディング・ブーケ
最初の夜と最後の夜の
寝入りばなに見たいくつもの
断片的な夢の残像
いつまでもいつまでも
激しい雨がつくりだす流れに飲み込まれてゆく
野良犬の遠吠えが聞こえる
「きみはひとりじゃない」
「きみはひとりじゃない」


おとこは
笑ったみたいに口をゆがめて
それから




動かなくなる





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