路地裏のはげしい雨にまぎれて/ホロウ・シカエルボク
て冷えているのを
生きているように口にしたくなるからブルースが生まれる
夕暮れとともに激しさを増して行く
微かにかがやいた割れた街灯の下で
くちびるを震わせているかれが見える
やさしい影は
かれの表情を闇の中に消してしまう
激しいけどか細い人知れぬブルース
かれのこころの中だけでいつまでも反響している
やわらかいゲージを張った
ふるいギターの音が雨の中に混じる気がする
幾千の言葉が生まれては消えて行った
路面を流れる雨のせいで
瞬時に過去に流れ去って行った
思い出しても思い出しても記憶出来ない名前のように
頭の隅の排水溝の
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