あなたが生まれた時、あなたは泣いて、周りの人は笑っていたでしょう?/村上 和
香の順番はまだ回ってこない
窓から見上げると
空が泣いているみたいだった
お行儀良くしてなさい
と注意を受ける
沈んだ空気に
軽い私の気持ちがふわふわと浮かんでしまい
少し眠たくなって
小さくあくびをしてしまったのだ
振り向くと
少女の頃の母がいた
お母さんこそ足をふらふらさせちゃダメだよ
と言うと
だって床まで足が届かないんだもん
と小声で返してきた
その口調が母親らしくない母らしく
少し可笑しかった
その後しばらく
ひそひそと
母の思い出の話をした
記憶の中だけにある古い小さな駅に
まだ電車が走っていた頃の
母が生まれ育った町
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