あなたが生まれた時、あなたは泣いて、周りの人は笑っていたでしょう?/村上 和
 
れる
その糸が赤く染まることはない

私は彼が喪服の釦を外して
ネクタイを緩めている姿を想像する
彼の恋人は
きっと幸せだ

不意に辺りを見回してみると
ちらほらと懐かしい顔があることに気付く
その表情に仕草に
それぞれの歳月が刻まれている
私がここにいることも
何人かは気付いてくれいてるかもしれない
赤くない糸で
ここにいるみんなと結ばれている
笑って声をかけたりは出来ないけれど
それでいい

お葬式という儀式を
私は子供の頃から嫌いではなかった
私はいつも上手に出来ないのだけれど
正しく悲しむということが出来る
唯一の場だと思うから

お焼香の
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