なみだ/塩崎みあき
な
毛虫が一匹這い出してくる
遠雷は季節の産声だった
青のなかの
雲の
なかの
なみだ
こぼれ落ちて
そのあとに
2
雨上がりの大空に
迷子の
雨粒がいて
帰りたいって
泣くから
帰り道を作ってくれた
晴れの日の
向こうの空の
わた雲が
終着地点を
あやふやにするから
渡り鳥が
やってくる
なみだってどんな型
鳥は
プリズムの中をゆく
涙型をした空の抜け穴から顔を出して
無邪気に笑っている
真昼の空の
道しるべのまぶしい
3
卵から孵った鳥たちの
悲痛の叫びは
5月のツツジ色を
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)