なみだ/塩崎みあき
 

毛虫が一匹這い出してくる

遠雷は季節の産声だった

青のなかの
雲の
なかの

なみだ

こぼれ落ちて
そのあとに




雨上がりの大空に
迷子の
雨粒がいて
帰りたいって
泣くから
帰り道を作ってくれた

晴れの日の
向こうの空の
わた雲が
終着地点を
あやふやにするから
渡り鳥が
やってくる

なみだってどんな型

鳥は
プリズムの中をゆく
涙型をした空の抜け穴から顔を出して
無邪気に笑っている
真昼の空の
道しるべのまぶしい




卵から孵った鳥たちの
悲痛の叫びは
5月のツツジ色を

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