笑うカスタネット/m.qyi
なくて、もっと冷たいカチンとした、凍て
ついた冬の空気だ。この詩形式によくありがちな甘い情緒の恋愛などは石原さんの歌のテ
ーマにはない。
こういうものを見ると、石原さんの歌のテーマは自分だ、自分以外何者も見ることがで
きない詩人だというのが僕の印象だ。コーンフレークの歌も場景描写のように見えて浮き
彫りにされているのは見る側の心理だ。観察者の側の眼差しの優しさの方である。
嵐の夜 波提の縁に回春の下駄をくわえて踊る先生(「虚飾拾遺集」)
―という作品にしてもこの先生が第三者とは思えない。僕には作者自身の投影に思えてな
らない。
とは言っても、一般的に自己の内面を
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