笑うカスタネット/m.qyi
 
は、一般に自己の
個人に自分のアイデンティティを置いている。一般的な例として、結婚の相手などを決め
るときに、決めるのは自分だと僕らは思っているのではないだろうか。

ユーモラスさが、石原さんの「自分」だったのかもしれないが、石原さんのクールさ、
寂しさといっても冷徹さといってもいいけれど、石原作品の基調をなしているそういった
トーンは現代人の「個人」の意識にあるような気がする。



III



「個人」なんて陳腐な言い草なのかもしれないが、僕には非常にひっかかる言葉だ。さ
っきの結婚の話ではないが、責任能力のある自律した個人なんて純粋な意味で在るわけが

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