うたたね/mugi
いくつもの音を、
同時に受けとりながら、
からからに干からびた、
舌が、
化石のように沈黙する夜に、
もう、語ることはすでに、
誰のあしどりか、
ほら、
またとりがおちるのなら、あなたが、
指をさしているその方角へむかって、栞がはさまれる、
千の、千切られた夏を、はりつける、巨大なしろい手が、
狼煙のようにそらに伸びて、おちたとりは、発砲性の入浴
剤がとけていくように、青と青のモザイクのあいまににじ
みはじめている、すこしは気分もよくなったかい、ここは
涼しいから、背中をさすってやりながら、わたしはその見
たこともない女について考えていた、女は妊娠していて、
そ
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