あくまでもシャープ/佐々宝砂
 
々しげに見つめ
きみをわずか慰める旋律に
そうたとえばシとミとラとレとソにフラットのついた
変ロ短調の重々しくも陰鬱な旋律に
耳を傾けていて
わたしのささやかなフラットになどまるで気付かない
そうそんなことには気付かぬがよいのだ
わたしはかろやかにステップを踏み
ほんの出来心できみの足を踏もうとして
やっとのことで思いとどまる

踏んづけたりしたらどんなことになるか
平手打ちを喰らわしたらどういうことになるか
ましてグーで殴りつけたらどんな恐ろしいことが起きるか

もちろんそんなことやるべきじゃない。

なぜなら宇宙はできるだけ長いこと
不均等を保つべきであるか
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