あくまでもシャープ/佐々宝砂
るから
それが人類のために最もよいことであるから
そうほんのすこしの反転もやるべきじゃない。
この世がもしも平均律なら
半音下げたフラットと半音上げたシャープは
同じ音を響かせているのではないか と
そうつまりきみとわたしは実は同じ種類のイキモノなのではないか と
わたしは思いこいねがう
きみが決して知ることのない衷心から
わたしは決して、
いや。
わたしはいつもあからさまに心を告げる。
わたしときみは見事なまでに濁り澱み唸り決して和せず
わたしはあくまでもシャープな態度で
シャープを盛大に六つもぶらさげた嬰ヘ長調を高らかに歌い上げる
そうつまりは煮え切らないきみに向かって
断固とした口調できっぱりはっきりと
複雑怪奇なこの混沌を
さらけ出し
預け渡し
だってわたしはきみを愛している。
わたしがシャープと言えば
きみはフラットと言う
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