テンオアラの嫁/リンネ
 
いるが、操縦室で向こうを向いたまま微動だにしない。あるいは運転手がいない。自分で発車させる。駅がない、線路だけが延々と続く。



しかたなしに近寄ると、その人だかりの中心に何かが落ちていることが分かった。嘔吐物である。それを見てみんな笑っているが、ぼくはわけも分からず、ただ悪臭だけが気になった。いつのまにか集団が移動し、自分を中心にして人だかりができているのであるが、やはり、ぼくはそれに気づかない。



結局アカムシユスリカをスライドガラス上に乗せ、ピンセットとピンで頭部を引き抜く。するとそれに繋がって引き出る諸器官たち。唾腺のみを残しほかはすべて除去する。1%酢酸オルセイ
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