時間の流れを動力とした遠心分離装置の性能とその顛末/Six
 


 Aさんはこの車酔いに似た眩暈に
 どうしても慣れない
 床に落ちた紙片は
 ところどころAさんの靴の跡で汚れ
 それにしても装置は回転を続けて
 重量の軽いものから
 少しずつその位置を変えていく

 相変わらずBさんは
 赤いインキをつけて判子を押している
 Bさんも眩暈を感じており
 そのために判子を押す手元が
 段々と狂いぶれていく

 BさんはAさんの頬の感触を乞う

 Aさんの頬が
 Bさんから徐々に遠ざかっていることに
 Bさんは気付いているのか
 気付いていないのか
 時々、判子を押す手をとめて
 何かを確認するように
 Aさんの
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