五十日目の日記/縞田みやぎ
水を突っ切った道路は酷く陥没して,ガードレールを乗り越えて瓦礫が道路に降り積もっていたが,水はもう引いていた。自分の前で停止したトラックはそのまま停止したままで運転席は空だった。道路にたくさんの車が押し流され積み重なっていた。運転席を覗き込む気にはならなかった。ありえない場所にまでボートが運ばれていた。ずぶぬれだったが,7キロ歩いて職場に行くうち,だんだん乾いた。水にやられていない土地は,ばかみたいに平和で,なんだかがっかりしてしまった。職場は水が来ず,無事だった。そのまま避難所の運営をした。避難所に配る食料は給食室から引っ張り出してきたものと近所の商店が届けてくれたホワイトデー用の菓子と。自分は
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