五十日目の日記/縞田みやぎ
る車は無理だ。置いていくのか?おいていくのか?おいて一人で?どこへ?
だめだ。間に合わない。
余震。
一緒にいるか。
しんとした。
外は相変わらずけたたましくサイレンが鳴っている。しんとして聞くと,警報,サイレン,救急車,消防車,パトカー,アナウンス,誰かの拡声器,何かがはじける音,ごーーーーーーというトンネルの中のような音。
これが,津波なのかなあ。
窓を開ける。いそくさいのかこげくさいのかあぶらくさいのかほこりっぽいのか,変なにおいがする。まちはみんな暗い。どこまでも暗い。雪はやんでいる。向かいの建物の向こうの空が赤い。火事か。濡れたものでも燃えるのか。
[次のページ]
戻る 編 削 Point(29)