五十日目の日記/縞田みやぎ
 
い。街灯もついていない。このラジオはライトもついていてよかったなと思う。
 商店はどれもやっていなかった。まちに人の気配がない。みんな逃げたのか。
 河の土手を見上げると,消防車がこちら岸に一台,向こう岸に一台とまっている。消防の人が数人,何をするともなく河を見ている。そちらに向かって歩いてみる。見咎められるかと思いきや,視線は向けられるものの何も言われない。橋のたもとまで行き,家の側に帰るように土手を歩いてみることにした。
 まだ完全に日は落ちていない。水位はやや多いくらいか。川岸の様子がおかしいのは,薄ぼんやりと見える中でも分かった。何故こんなところに船が。しかもボートではなく小型の漁船
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