五十日目の日記/縞田みやぎ
 
疲れた。
 猫たちにごはんをあげる。僕の顔を見て安心したようで,食べ始める。結構ずぶといなお前たち,と思いながら,ろうそくや古い携帯,手帳を探す。どれも見つからない。台所にちょっと足を踏み入れただけでけたたましくガラスと陶器の山が崩れる。割れるものは全て割れたようだ。これは後に,相方が帰って来てからにしよう。どうせ調理はできない。食器棚にかろうじて手が届いたので,中を見る。揺れで食器棚自体が歪んでしまったのだろう,棚板が全部落ちて中身が雪崩れている。中を探って,非常用のクリームサンドクラッカーを取り出す。
 冷蔵庫が40センチほども動いている。電子レンジが棚から落ちかけている。
 余震。

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