五十日目の日記/縞田みやぎ
 
からここに今夜はいるよ。」「分かった。もし余裕があったら私の実家を見に行って。明日は出勤になったから行くね。」それだけ話したところで,異音と共に通話は切れた。
 陸橋を超えると運河がある。運河を渡る橋の手前,信号から2台目,トラックの後ろで止まった。この先も渋滞か?
 いや。何かがおかしい。
 何故,反対車線の車も橋の上で止まっていてこちらに進んで坂を降りてこないのか。もしかして,この車列はもう動かないのではないか。いやな予感に押されるように,トラックの左脇をすり抜けて橋の手前を左折する。あちらにも橋があったはずだ。トラックの脇に出た自分の目に飛び込んできたのは海だった。
 なんだこれは。
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