冷たい溶岩流/ホロウ・シカエルボク
細胞に染み込んでくる
リアルだ
明らかなものより
ずっと
真夜中の現実は鉤裂きだ
どこにもない爪を思わせる
その先端の
おそらくは血の滲んだ
黒さを
ああ
人が焼けた後に溜まる灰だ
きっとそんなものに似ているのだ
この粘つきは
この過重は
書かれぬまま幾年も過ぎた
白いままの頁の黒さだ
ウツボカズラのがらんどうだ
無灯の部屋に染み込む吾身だ
息が途切れないから時間を数え続けている
いつからか気づけぬままに
夜の残像の中で生きていたのか
まだ冷える空気の中の断片を
がらあきの口の中に落とし込みながら
動けない理由が金縛りをかける
凍てつく血管の示唆
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