菜の花のこと/はるな
子とは会わなくなった。
どちらにせよ、でも、それはもう過去のことだ。わたしが刺青を入れたとして、そのことはその子の刺青とは関係がない。何物とも関係のないものとして、わたしはしるしを欲しているのだし。
駅について、再交付された免許証を財布から取り出して、もういちど、みた。
目のまわりを黒くして、髪のみじかい、頬の蒼いひとの免許証。これで心おきなく煙草が買えるね。
服も買わず、髪も染めず、模様も彫らず、コーヒーは半分以上残してきた。本は読み進められず、口のなかは依然として腫れている。
でもいちめんの菜の花をみた。それだけで今日はよかった。
あの、免許センターの、不機嫌そうな女性の事務員
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